オプセル社 レポ
   ( v-06_7_6 )




  「闇への回帰」

サラシ
それはもう一つの闇 ・ ・ ・ ・

循環する栄養素、降り注ぐ光。
砕ける波は豊かな酸素を供給し、

酸素は微生物や魚たちの消化と成長を促し、
見えにくい水面下で食物連鎖を燃焼させてゆく。

サラシ
その泡は触媒、そこは反応炉、集う全ての生きものが覚醒する液状のストラクチャーだ。

しかし ・ ・ ・ ・ いつしかそこに生き物とは違う流線型の物体が泳ぐようになり
連鎖の頂点に君臨していたシーバスは捕獲されうる存在となった

21世紀が始まるころ
流線型の物体は外骨格の昆虫型ボディーから内骨格の離脱メカへと変身した。

遊動フックルアーへの変貌

このビッグジャンプは改良ではなく進化だ


2006年7月6日

磯ヒラの山本は雨後の川にいた。

濁りや暗闇にもサラシのエッセンスが含まれている。
ならばそこでもボーグは有効なはず・・・。
頭では分かっていたこと。

しかし山田純一氏、齋藤俊広氏、古源貞紀氏ら新潟の名手が相次いでランカーを狩ってゆく様子は静寂のポイントに慣れていない山本に刺激を与えてくれたのだった。

静岡県賀茂郡松崎町 那賀川
オプセル事務所から歩いて10秒。

磯では静岡、愛知、神奈川方面からの遠征組みにしかあうことがない。
こんなに近い場所でシーバスと遭遇できるなら地元なら磯アクセスは億劫になるのも分かる。
リアルタイムで雨量が見える生活の中で濁りが出るタイミングを至近距離で待てばよいのだから。

それらの情報はすべて知った上で敢えて磯に立ちつづけた9年・・・。
ようやくと私は足元にあった静寂のポイントを見つめる気持ちになった。

もちろんこれまでにも昼の濁りの川で何度かシーバスを掛けたことはあった。
しかし今回は何かが違う。

新潟と結ばれた念波が、私にランカーを掛ける意欲を掻き立てていた。


夕方6時半を過ぎると周囲でポツポツとヒットが出始めた。
地元の若者たちが集まっている場所に移動。

なるほど、こういう場所でアタリがでるのか・・・。

空いているスペースに入れてもらいキャストを続けた。
5キロ前後のいい型の平鱸を2尾ほど若者たちが掛けていた。

しかしバラシが多い。
これが磯ならさらにバラシているだろう。

9時が過ぎた。
ボーグをファルコンからオスプレイに変えた。

彼らはそこにいてもヒットするとは限らない。
特に大型はルアーを良く知っていて、だからこそ大型に成れたともいえるのだ。

選んだのはオスプレイ90・ジャックHS。
固定重心、12.5g、スローシンキング、飛距離も出て応答性が非常に高い。

周りでは並み居る名機をつけた若者が熱くキャストを繰り返している。
ジャックに交換して約5分、

PEラインがプルプルと小気味良いウォブリングを伝えてくる。
いかなるスピードにも変化にも、けっしてへたれることのないアクション。

来い、来い・・・
ピックアップまで7m・・・・。

軽いジャークを入れた直後だった。

「ヴィン!」

張り詰めた弓を弾いたようなショックに叩かれた。

・・・・ヒットーッ!

っと叫ぶと同時にバシッとアワセる。

緩めにセットしたドラグがプシューっと逆転し、ロッドが弧を描いた。

来た・・・。

フィーンとラインを引き出し10mほど岸から離れたターゲットはズボ、ズボッとドスの効いたエラ洗いを放った。

ここで飛ばされるシーンを今日も何度見たことか。

やれるならボーグを飛ばしてみろ。

常夜灯の届かない暗い水面にぼわーんとほの白い水しぶきが上がる。

でかい・・・!

リストを柔かくしてエラ洗いのショックを吸収する。

ボディーが離脱しクラッチが掛かるボーグならPEラインによる鮮明な取り込みを堪能できるのだ。

ひとしきりのラッシュを凌ぐと私はそのままゆるやかにテンションを掛け下流の砂州へと向かった。

近くにいたアングラーはすでにキャストを止め、集まってきていた。

かなり大きいサイズだと分かっていたので慎重に寄せる。

水深が浅くなり異変を感じたターゲットはさらに猛烈な走りを見せラインを引き出してゆく、

2度、・・・・そして3度目の突っ込みの後、砂州に平行するように泳ぎだした。

ライト点灯。

姿が浮かび上がる!

(水中カメラハウジングが役に立った)

「おーでかい」・・・と、どよめきが起こる。

フッキングの様子は? ・・・ 完璧だ。

このクラスになるとちょっとしたことでシステムを破壊できるパワーを秘めていて油断ならない。

しかしフッキングもよく、いい機会なので同行していた塗装担当の山本さん(同姓)にロッドをあずけ、私はネットを持ち水に入った。

すると異変を感じとられたのか?、それとも君の手には落ちたくないと言いたかったのか?(笑)
余力を残したターゲットに何度も引きまくられ、竿を伸されてあたふたする山本さん!

「竿、立てて、立てて、伏せて、伏せて!」回りから支離滅裂な声援が飛ぶ(笑)。

そしてしばらくして落ち着いたターゲットの行く手を山本がそっと抑えるように確保しそのまま陸上げ成功!


 90cm  8.75k 平鱸

「でけぇー!」と、また歓声があがった。

「こんなの見たことないっすよ!」

地元の若者から多くの賛辞を頂き嬉しかった。

山本は重量記録更新とリバー平鱸の真髄を見届けることができた。

これも山田純一さんが新潟にボーグを知らせてくれたおかげだ。

その先で齋藤さんが、古源さんが素晴らしい広がりを作ってくれたからに他ならない。

ネットという新たな情報網から届けられた出会いが私を変えてくれたのだ。

サラシという白い闇から本当の闇への回帰。

それは新鮮な感動だった。





(ジャックHSのボディーが写っていないがこのクラッチフッキングは簡単には解けないだろう。
しかしフックを外すのは容易だ。)

しかしこのレポには続編がある。



続編

ランカーヒット、ひと時のお祭りは過ぎた。

大型が単独でいることは珍しいからもう一尾いるかな?とジャックHSのリトリーブを再開。

磯の単独釣行ならいざ知らず一尾めを取り込んでいる間に多くのルアーが投げられているのでここでの連発はないなとは思っていた。

しかし二匹目はいた。

5分ほどたったころロッドの中ほどをガンと叩かれるような衝撃が走った。

PEライン独特のザラつくような鮮明なアタリ。

ヒットーッ! 

同時にパシューンとアワセを入れる。

また来た!

磯の連発とは少し違うがエキサイティング!

直前のヒットと遜色ない強い引き。

しかしランディングのパターンはつかんでいるのでフックアウトがなければ取れると確信。

ドバドバッと激しいエラ洗いを2発。

エラ洗いでもボーグは簡単にははずせない。

約4分後、集まる観衆とざわめきの中、静かな河口の砂州に82センチ6.5キロの平鱸が横たわっていた。



一尾目と比べると小さく見える


この2尾は周囲で釣れていた個体たちと明らかに異なるサイズ。

この2尾がボーグに選択的にきたことは幸運である。

サイレントであること、ジャークの掛け方の違い、めぐり合わせ?

理由はいくらでも考えつくだろう。

その本当の理由はわからない。

ただ2尾のランカーが激しいファイトの末にランディングされたのだ。

さらに翌日、翌々日とサイズは3〜4キロクラスにダウンしたが釣れ続けたのだった。


7月7日  3キロクラス  ジャックHS チャート・オレンジ

7月8日  3キロクラス  ジャックHS チャート・オレンジ



追記

ルアー以外に「引っ掛け」やってるひとが松崎町の那賀川には知っている限りでは2名いますが私たちルアーマンとしては残念なことです。

鮎の友釣りは鮎の習性を引き出して掛けますから「引っ掛け」と同じではないです。

いずれにしても魚を取るのだから同じだろうという意見は出るでしょう。

その一人はかつて町の少年たちにルアーを説いていたのですから本人は後ろめたいでしょう。

いずれにしても活性が落ちたときに集まる寝床のような場所にこっそり針だけを通して強引に連れ去るのはテロっぽくて暗いですね。

最後はちょっと不愉快な結末でした。


今回のレポはこんな感じです。

山純さん、人ってなかなか変われないんですね(笑)。

川にくるまで9年も掛かりました。

川や河口にも素晴らしい魅力があるのが分かりました。

磯だけでなくこれから川に通うことも多くなると思います。

ただ、立つポイントはやや変わるかもしれませんがいい加減なものだけは作らないという所存だけは変わりませんよ。

これからもよろしく頼みます。


ボーグ山本